医療費控除の対象者
- 一年で10万円以上の控除対象の医療費がかかった方
- 低所得者(総所得200万円以下)は、総所得金額の5%以上の控除対象の医療費がかかった場合は対象となります。
対象期間
5年前まで遡って医療費控除の申請を行うことができます。
なお、控除対象となるのは、あくまでその医療費が実際にかかった年なので、「去年の医療費を今年の医療費と合わせて控除する」「数年に渡った医療費支出を今年の収入からまとめて控除する」などは、できません。
例えば、2年前にかかった医療費を申告すると、『2年前の医療費は2年前の収入から控除』となります。
2年前にかかった医療費と今年の医療費を同時に申告しても『今年の医療費は今年の収入から控除』『2年前の医療費は2年前の収入から控除』となります。
対象となる範囲
控除できる医療費は、本人のものだけでなく、「生計を同じくする子供・配偶者・両親・兄弟姉妹・祖父母」の医療費も対象となります。
生計が同じであれば、収入を得ている本人の医療費でない『家族の誰かの医療費』でも、医療費控除の対象となります。
※扶養の有無は、関係ありません。
※「生計を同じくする」とは、一緒に生活していたり、単身赴任や入院などで別居していても家計全体の支出と収入が一体性がある状態です。
同じ財布や口座を使って生活しているイメージです。
何らかの理由で夫婦共に別の口座で家計を管理している場合、別途証明できる書類の提出や宣言書の記入が求められる場合があります。
同居していれば証明しやすいのですが、別居中で家計の一体性を説明する場合、介護や学費・各公共機関への支払いなど、常に支出している費用の管理・支払い状況を説明するのがスムーズです。
高額療養費制度を活用した場合
高額療養費制度から支払われた医療費は、控除に含めることは出来ませんが、自己負担分の医療費は医療費控除の対象となります。
例)70歳未満・年収370~770万円の方が高額療養費制度を活用した場合
医療費100万円⇒本人負担(30%)30万円⇒高額療養費制度の適用による自己負担額は87,430円となります。
※高額療養費制度による自己負担額を算出するための計算式
80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円
医療費100万円(本人負担30万円)ですが、医療費として控除できるのは、自己負担額の87,430円です。
高額療養費制度は、月あたりの医療費に自己負担の上限額を定め、それ以上の金額を国が補填する制度です。
1ヶ月の医療費が下記に当てはまる方は、高額療養費制度を活用することが出来ます。
- 70歳未満で住民税非課税の方=35,400円以上
- 70歳未満で年収約370万円以下の方=57,600円以上
- 70歳未満で年収約370~770万円の方=80,100円以上
- 70歳未満で年収約770~1,160万円の方=167,400円以上
- 70歳未満で年収約1,160万円以上の方=252,600円以上
- 70歳以上で所得区分が、現役並み所得者に区分されている方=80,100円以上
- 70歳以上で所得区分が、一般に区分されている方=44,400円以上
- 70歳以上で所得区分が、低所得者Ⅱに区分されている方=24,600円以上
- 70歳以上で所得区分が、低所得者Ⅰに区分されている方=15,000円以上
高額医療・高額介護合算療養費制度を活用した時
高額医療・高額介護合算療養費制度によって給付された金額を除いた、自己負担分が医療費控除の対象となります。
※医療費控除申請を行った後で高額医療・高額介護合算療養費制度を活用した場合、税務署へ修正申告を行わなければなりません。
■≪後期高齢者医療制度の自己負担額≫と≪介護保険の自己負担額≫を合算した時の自己負担額の上限額
- 現役並み所得者(上位所得者):自己負担額の上限67万円
- 一般:自己負担額の上限:56万円
- 低所得者Ⅱ:自己負担額の上限:31万円
- 低所得者Ⅰ:自己負担額の上限:19万円
■70~74才がいる世帯の≪国民健康保険またはその他の健康保険の自己負担額≫と≪介護保険の自己負担額≫を合算した時の自己負担額の上限額
- 現役並み所得者(上位所得者):自己負担額の上限: 67万円
- 一般:自己負担額の上限:62万円
- 低所得者Ⅱ:自己負担額の上限:31万円
- 低所得者Ⅰ:自己負担額の上限:19万円
■70才未満がいる世帯の≪国民健康保険またはその他の健康保険の自己負担額≫と≪介護保険の自己負担額を合算した時の自己負担額≫の上限額
- 現役並み所得者(上位所得者):自己負担額の上限: 126万円
- 一般:自己負担額の上限:67万円
- 低所得者Ⅱ:自己負担額の上限:34万円
- 低所得者Ⅰ:自己負担額の上限:34万円
控除対象になる医療費
介護関連でかかった医療費
※要介護・要支援認定を受けていて、介護保険による自己負担額を支払っている方向けの情報です。
※要介護・要支援認定を受けたい方は、お住まいの市区町村役所の窓口(介護保険課や健康福祉課など。分からない時は総合窓口へ)へ相談・申請しましょう。
介護保険にかかわるデイサービスや福祉用具の利用時に支払う自己負担額も控除対象になります。
※ただし、高額医療・高額介護合算療養費制度や高額療養費制度から給付を受けた場合は、医療費から給付額を引いた金額が医療費控除の対象となります。
対象になる
主に介護保険サービス利用時の自己負担額が対象になリます。
※介護予防サービスや地域密着型サービスなどサービスの種類に関係ありません。
入所施設関連
(特養) 特別養護老人ホーム・指定介護老人福祉施設・指定地域密着型介護老人福祉施設
- 介護費・食費・居住費の自己負担額の1/2
- その他介護保険自己負担額
(療養病床)指定介護療養型医療施設・療養型病床群
- 介護費・食費・居住費の自己負担額
- その他介護保険自己負担額
- 治療や診療のために必要な個室などの特別室利用料
(ろうけん)介護老人保健施設
- 介護費・食費・居住費の自己負担額
- その他介護保険自己負担額
- 治療や診療のために必要な個室などの特別室利用料
居宅介護関連
介護保険外サービスを受けている場合は、介護事業者に所属するケアマネージャーから介護保険外サービスであることを告げられてサービスを受けていると思います。でも介護保険の受給と医療費控除の適用か非適用可では、少し違う見方が必要となります。
居宅サービスへの医療費控除適用非適用の見分け方としては、「医療・看護のため」か「生活を支援する介護・介助のため」かがポイントです。
※医療費控除の対象となる医療費かどうかは、介護保険指定事業者からの領収書に記載されています。
主に医療費控除の対象となるサービス
- 訪問看護
- 介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
- 介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)
- 介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護(ショートステイ)
- 介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)
- 複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
前項の「主に医療費控除の対象となるサービス」と併用すると医療費控除の対象となるサービス
医療費控除の対象となるかは、前項のサービスと併用しているかによって変わってきます。
※医療費控除の対象となる医療費かどうかは、介護保険指定事業者からの領収書に記載されていますので、そちらを確認するとわかりやすいです。
喀痰吸引等は、前項との併用でなくても医療費控除の対象となります。
- リハビリや療養のための通所や入所の際の交通費も医療費控除の対象となります。
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除きます。)
- 夜間対応型訪問介護
- 介護予防訪問介護
- 訪問入浴介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 介護予防通所介護
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 介護予防短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限ります。)
- 複合型サービス(上記1の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
対象にならない介護関連費用
入所施設関連で対象にならない費用
(特養) 特別養護老人ホーム・指定介護老人福祉施設・指定地域密着型介護老人福祉施設
- 理美容や嗜好目的の支出や食材費などの日常生活費
- 療養目的でない特別なサービスにかかった費用
(療養病床)指定介護療養型医療施設・療養型病床群
- 理美容や嗜好目的の支出や食材費などの日常生活費
- 療養目的でない特別なサービスにかかった費用
(ろうけん)介護老人保健施設
- 理美容や嗜好目的の支出や食材費などの日常生活費
- 療養目的でない特別なサービスにかかった費用
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
- 食費・居住費
- 福祉用具貸与費
介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)
- 食費・居住費
- 福祉用具貸与費
居宅サービスで対象にならない費用
喀痰吸引等は医療費控除の対象となります。
- 訪問介護(生活援助中心型)
- 認知症対応型共同生活介護【認知症高齢者グループホーム】
- 介護予防認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム等】
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護予防特定施設入居者生活介護
- 福祉用具貸与
- 介護予防福祉用具貸与
- 複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)
出産関連でかかった医療費
医師によって妊娠中であると診断されてから、出産のための通院費や妊婦の定期検診、検査にかかった費用、入院費は、医療費控除の対象となります。
自治体によっては、妊婦検診補助券をチケット形式(自治体負担・母子手帳と一緒に渡される)として事前に発行されることも多くありますが、チケットで補填された分の医療費は対象とはなりません。※里帰り出産時に妊婦検診補助券を使用したい場合は、里帰り先の病院と住んでいる自治体に連携して貰う必要があります。
対象になる
安全な出産のための医療を受診するためにかかる費用(自己負担額として支払ったもの)の全般が医療費控除の対象となります。
医療費控除時には領収書が必要となりますが、家計簿などの記録にある交通費を証明書類として扱うことも可能です。
- 出産のための通院費
- 妊婦の定期検診費
- 検査にかかった費用
- 入院費
対象にならない
- 里帰り出産のための交通費
- 医療上の理由のない個室などの特別室利用料
- 入院時に購入した服飾費
歯科関連でかかった医療費
対象になる
治療を目的として必要であれば、虫歯・被せ物・歯周病・歯根治療・入れ歯・差し歯・インプラント・自費診療内で生じた治療費・かみ合わせ・処方薬・治療に必要な通院費など、様々なものが医療費控除の対象となります。
- 虫歯
- 被せ物(金・セラミックなども可)
- 歯周病
- 歯根治療
- 入れ歯
- 差し歯
- インプラント
- 自費診療内で生じた治療費
- かみ合わせ
- 処方薬
- 治療に必要な通院費
- 発育に障害となる子供の不正咬合や歯並びなどの治療にかかる、歯列矯正費用
- 睡眠時無呼吸症候や不正咬合・咀嚼障害のための大人の歯列矯正費用
- ブリッジ
- その他治療に必要な薬剤、歯ブラシ購入費用
歯科ローン・クレジットカード分割払いも医療費控除の対象
医療費控除を受けるときの添付書類として、歯科ローンの契約書の写しや信販会社の領収書を提出すれば、歯科ローンやクレジットカードで分割払いした医療費も控除対象となります。
複数年に渡る分割払いの場合は、歯科ローン契約が成立した年(立て替え払いをした年)が対象となリます。
ただし、分割にかかる金利・手数料など治療費以外のものは対象になリません。
対象になるかどうかの判断基準
ただし、内容によっては『治療を目的として必要かどうかの判断』は、本人であっても難しく、医療費控除の添付書類を見る税務署員でもやはり治療目的で必要かどうかは判断が難しいです。
※本人としては治療目的であったのに、税務署や市役所の出張所で受理されないなどのケースがあります。
歯科医師による診断書(診断名と治療目的であることの明記)を合わせて提出しましょう。
特に大人の歯列矯正など、多くの場合審美目的と勘違いされるような治療に必要な書類となるでしょう。
金歯やセラミックなど、一般的に使われる自費治療はスムーズに認められる様になった一方で、治療前に不正咬合や咀嚼障害であったかどうかの判断は、税務署員では難しく、部分矯正やマウスピース矯正など大きく見た目が変わらない治療などではより判断が難しいと考えられるためです。
対象にならない
予防・美容・審美にかかわる医療費は控除されません。
また、一般的な日常的に使用される歯ブラシや歯磨き粉・入れ歯洗浄液や機会の購入費用も医療費控除の対象となりません。
- 日常使うための歯ブラシ・歯磨き粉
- ホワイトニング全般
- 虫歯予防のためのフッ素塗布
- 歯垢除去
- 歯周病予防
- 特殊な材料や技術を使った、一般的に支出される水準を著しく超えると医療費と認められるもの
減税額シミュレーション
医療費控除を使った時、使わない時、いったいどれくらい納税額(所得税と住民税)は変わるのでしょうか。
納税額の違い
例)年収480万円:課税所得が320万円
■医療費控除を使わない場合
所得税=222,500円
住民税=320,000円
所得税+住民税=542,500円
■医療費控除額50万円の場合
所得税=172,500円
住民税=270,000円
所得税+住民税=442,500円
■差額:100,000円
所得税と住民税を合わせた納税額が10万円違います。
手続きのタイミング
自営業者・年金受給者
通常の確定申告の時に合わせて行ないます。
会社員
会社で年末調整を完了している方は、翌年1月以降に税務署で還付申告を行ないましょう。
還付申告とは、医療費を申請することで払わなくても良かった税金の還付を受けるための手続きです。
手続きに必要な書類
- 確定申告書
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- 還付金の振込先が分かる書類(通帳など)
- 印鑑
- 交通費を確認できる書類(判読できる手書きのメモも可)(証明できるもの診察券や日記も可)
- 医療費の明細書・領収書
- 明細書・領収書が発行不可場合:医療費控除の内訳書に記載する
手続きの場所
税務署または市区町村役所にある税務署出張所で行ないます。
どこの税務署に行けばいいのかわからない時は、市区町村役所に電話して聞いてみましょう。
よくある質問
ふるさと納税と医療費控除
ふるさと納税は、寄付金としての控除対象となります。
手続きは確定申告時です。
そのため、多額の医療費を所得から控除してもふるさと納税(寄付扱い)を行った際に申告する金額へ影響することはありません。
自費で健康診断を受けた
健康診断や人間ドックを受けたときの費用が医療費控除できるかどうかは、治療のための検査であったかどうかです。
検査によって治療が必要な疾病が判明し治療を開始した⇒医療費控除できる
検査によって検査入院が必要となった⇒検査入院で疾病が判明し治療を開始した⇒医療費控除できる
検査によって検査入院が必要となった⇒検査入院で疾病が判明しなかった⇒医療費控除できない
検査によってMRIや組織検査など追加の検査が必要となった⇒追加の検査で疾病が判明し治療を開始した⇒医療費控除できる
検査によってMRIや組織検査など追加の検査が必要となった⇒追加の検査で疾病が判明しなかった⇒医療費控除できない
検査によって治療が必要な疾病が判明しなかった⇒医療費控除できない
となります。
美容クリニックで治療を受けた
病気や怪我のための治療でしたら医療費控除の対象となります。
しかし、医療脱毛やほくろの除去・育毛剤の購入や薄毛の遺伝子検査など、美容目的の治療や施術・薬剤やアイテムの購入は対象となりません。
健康維持や疲労回復などを目的とした、点滴療法や注射・作業療法も対象となりません。
医療脱毛やメディカルエステなど『医療○○○』『メディカル○○○』という施術でも医療費控除の対象とならないケースが多くあるので、施術名称で判断はしないようにしましょう。
不妊治療
不妊症に起因した医師による各種生殖補助に関する治療が、医療費控除の対象とます。
ただし、民間療法などの医師以外の人間の治療は対象となりません。
不妊症治療には、治療結果を受けた順を追ったステップアップによる治療内容の変更がありますが、すべて医療費控除の対象になります。
- タイミング法による指導・経過観察
- 排卵誘発剤を使った治療
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
- 卵管や卵巣・精巣などの検査や治療
- 不育症(習慣流産)治療
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